札幌の大通り公園では、早くも秋のバラが花を咲かせていました。8月30日、北海道マラソンで復活の大きな花を咲かせたのは、新谷仁美さんです。2年半ぶりのマラソン。新谷さんは2023年にヒューストンマラソンに出場し、日本記録に12秒足りない2時間19分24秒でフィニッシュ。その後、左足の足底筋膜炎でレースから遠ざかっていました。
レース2日前、私が新谷さんに話しを聞くと「故障している間も私を信じて支えてくれた所属会社、スポンサーさんに結果で応えたいです」と厳しい顔で話してくれました。横田真人コーチが言うには、米国・サンディエゴで行った合宿では、ヒューストンの前と変わらない良い仕上がり。それなのに彼女は全然笑わず「怖いです。マラソンは私にとって戦いですから」と。
レースは、来年10月に開催されるロサンゼルス五輪代表決定戦であるMGCファイナルの出場権獲得に向け、ペースメーカーが2時間30分のフィニッシュタイムを想定してペースを刻みました。でも新谷さんと、初マラソンの不破聖衣来さん、吉薗栞さん、萩谷楓さんはペースメーカーの前を走り、フィニッシュタイムが2時間24分の速さ。
30㎞を過ぎ、更に新谷さんがペースを上げスパート!その後は一人旅でした。彼女の体幹がぶれない美しいランニングフォームは芸術的。細かく盛り上がる筋肉も美しく、「体で紡いだ努力の時間が分かりますね」と私が言うと、隣でゲストのハリー杉山さんが「新谷さんの生き様そのものです!」と涙ぐんでしまいました。私もつられて涙。2時間24分14秒の大会新記録でフィニッシュした新谷さん、初めて嬉しそうにニッコリ。ロサンゼルス五輪への旅の始まりです。
(共同通信/2026年8月31日配信)