6月9日から4日間にわたり開催された日本陸上競技選手権大会。2日目、長居陸上競技場のサブトラックには、水色のTシャツを着た田中希実さん(東京五輪女子1500m8位入賞)の姿が。ポニーテールの髪をなびかせながら軽快にウォーミングアップする彼女を、コーチで父の健智さんが見守っていました。髪を束ねたゴムの色はピンク。すると「調子がいい時はピンクなんですよ」と健智さん。
希実さんと健智さん、この日本選手権の目標は「1500mでよい滑り出しをして、800m、5千mのトータルで良い走りをすること」としていました。2人はこの夏、アメリカオレゴンで開催される世界陸上でメダルを目指しているのです。
希実さんのルーティンはスタート直前に2回その場で上にジャンプすること。大体それで本人は調子が分かるそう。この日、1500m決勝ではそのジャンプが一段と高くみえました。希実さんはスタートすると、いつものように飛び出さずに集団の中に。それは「今日の目標はラスト1周を60秒切って走ること」と健智さんとたてた目標をクリアするためです。そして見事59秒台で走り優勝。「よい滑り出しです」と健智さんも嬉しそうでした。
4日目の800m決勝では、驚異の追い上げを見せたもののわずかに届かず2位。その75分後に5千m決勝のスタートラインへ着き、世界選手権の派遣標準記録を切って優勝しました。驚きのタフさ!次元が違います。
「瞬間瞬間の緊張感を世界のトップ選手は経験いる。近づきたい」と希実さん。健智さんは「この4日間のチャレンジは1つに繋がりました」と手ごたえを感じているようです。希実さんの夏の挑戦が楽しみです。
(共同通信/2022年6月13日配信)