常識を覆す走り
1月26日はまさに、松田瑞生讃デー(SUNDAY)でした。東京五輪出場の残り1枚の切符をかけて行われた大阪国際女子マラソン。優勝した松田さんは、これまでの女子マラソンの常識を覆すような走りをしたのです。というのも、スタートするや否や2時間20分、21分台の記録を持つエチオピア、ケニアの選手達を引き連れるように、先頭で速いペースを刻みました。私は第1移動中継車から「速い、速い、抑えて」と声をかけたくなりました。
でも5kmを16分半のハイペースに小原怜さんが17km付近で先頭集団から遅れ、福士加代子さんも20km手前で離れ…。ペースメーカーが外れた30km過ぎにはアフリカ勢も振り払い、松田さんは一度も先頭を譲ることなく、圧倒的な強さをみせて優勝しました。時代が変わるようなマラソンを間近で見られた私は幸せです。
松田さん、走り終わると「30kmからマメが出来ちゃって、後半ペースを上げられなかったのが悔しい」と。右足の裏は皮がめくれていました。これでよくがんばったねと言うと、「はい、アドレナリンでがんばりました」と。天真爛漫な笑顔。
横綱相撲の走りは、米国・アルバカーキでの月間1300kmに達した豊富な練習に裏付けされていました。それを監督の山中美和子さんと二人三脚で行ったのです。そして「大事な練習が終わった日は監督が作ってくれたパンを食べるのが楽しみでした」と松田さん。監督に報いるレースがしたいという気持ちがはしばしに感じられます。また「松田は元気満々に見えて、すごくデリケートなんですよ」と山中さん。ずっと松田さんに寄り添ってきました。2人の勝利に大阪が沸きました。
(共同通信/2020年1月27日配信)
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