ユーモアたっぷりの会長
山茶花が冬空を彩った1月下旬、「2020年国際金融都市・東京の未来」がテーマの講演会でお話しました。夏に東京オリンピック、パラリンピックを控える中で、スポーツの可能性について話して欲しいとのことでした。そして私の後の講演者は、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会会長の森喜朗さん。「森会長の前座を務めさせて頂きます」と言ったら会場の皆さんは大笑い。でも正にそんな感じになりました。
82歳になられた森さん。壇上に上がると先ず、用意されていたテーブルと椅子から演台に変更。立ったまま1時間話すと言うのです。これには皆びっくり。そして控え室での会話から臨場感たっぷりに。「さっき増田さんに右手の包帯のこと聞かれましたけどね、これはオプジーボの治療の跡ですよ」と。森さんは首相時代の前立腺がんに続き、2015年に肺がんの診断をされ、あと1年の寿命だなと覚悟を決めたそうです。しかし、本庶佑先生のノーベル賞受賞の研究が生かされた薬、オプジーボが肺がんに適用されることになり、治療を始めたのです。「私にはよく合ってね。髪の毛が生えてきましたよ」と。
組織委員会事務局へも頻繁に顔を出しているそうです。そして本番に向けて、しなければいけない対策は3つあり「テロ、暑さ、輸送です」と。費用がかかっても、万全を期して行うことが大切だと話しました。それがニッポンの評価にもなるからです。「私はラグビーワールドカップが終わるまではがんばろうと思いました。今は東京オリンピック・パラリンピックが終わるまでがんばりますよ」と。とても82歳とは思えない体力、気力、知力。何より、森さんはユーモア溢れる人なので免疫力が高いのだと思いました。
(共同通信/2020年2月3日配信)
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