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おしゃべり散歩道2019

小出義雄さんにお別れ

 小出義雄さんがご逝去されました。平成が幕を下ろす1週間前に散るなんて、華のある小出さんらしいです。「自分の誕生日(4月15日)と母の誕生日(妻・啓子さん4月22日)を迎えてから旅立ちましたね」と次女の正子さんは話します。
 言葉にも華がある人でした。「俺バカだからよー、かけっこが大好きでさ、60年間かけっこやってんだよ」と、こんな小出節を聞けなくなるのが寂しいです。心底陸上競技を愛し、陸上競技からも愛された人。「俺のはでたらめ理論」と自ら言いながら、豊富な経験や感覚に基づいたその指導で、有森裕子さんや鈴木博美さん、高橋尚子さんといったメダリストを育てあげたのです。
 小出さんの指導の最大の特徴は選手を褒めて伸ばすこと。「いいね」「最高」が口癖で、40km走などの大事な練習の時は車の中から何度もその言葉で励ましていました。小出さん、たまには別の言葉も?と私が言うと「本番中はこれでいいんだよ。文節短くポジティブなのがね」と。そして練習が終わった後に、具体的に褒めたり、時には叱ったりしていたのです。朝練習も含め、常に選手のそばには小出さんの姿が。「いつも見てなきゃ具体的に褒められないよ」と小出さん。褒めるには観察力が必要なのだと教わりました。
 私も解説の本番前に「明美さんよ〜、あんたの解説、最高!中身はともかく、声がいいもん」と言われたことを思い出して、胸が熱くなります。朝ドラ“ひょっこ”の語りの時は、「観てるよ、いいね、“ひよっとこ”」と言って笑わせてくれました。小出さんは、周りを明るくするお日さまのような人。小出さん、ありがとね。天国で来年の東京五輪を見守ってくださいね。

(共同通信/2019年4月26日配信)

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