熱田神宮から伊勢市までの106.8㎞を8人の選手で繋ぐ全日本大学駅伝。今年も監督バスの中から様子をお伝えしました。前方の席に座った駒澤大学の大八木弘明監督にいまひとつ元気がありません。前半の山場に起用するはずだった鈴木芽吹さんが故障で走れないことも理由でしょう。また感染予防のため今年からお弁当が配られないことに。「一番に弁当を食べるのが私のルーティーンだったのに残念。」と後ろの席で青山学院の原晋監督は元気いっぱいです。 レースがスタート。1区では中継所手前500mで駒澤の佐藤条二さんが鋭いスパートを。すると大八木さん、前のめりになって「佐藤、いいぞいいぞ!」と大興奮。そして2区にタスキを渡し、「佐藤さん区間新記録ですよ」と言うと「いやーオレもびっくりしちゃったよ。やる時はやるね、佐藤」とご機嫌です。監督車の中も大八木さんが元気になると空気が暖まってくるのです。 2区では東京五輪3000m障害で7位に入賞した三浦龍司さんが9人抜きの快走で順天堂大がトップに。それから3区で東京国際大のビィンセントさんが区間新記録の激走てトップ。その後、5区では早稲田の諸冨湧さんが先頭に。順位はめまぐるしく変わり、監督バスの中も熱くなりました。 そして7区で駒澤の田澤廉さんがエースの貫録をみせてトップに。8区では花尾恭輔さんを青学の飯田貴之さんが追い上げてついに並びました。「前いっちゃダメだよ。後ろついてついて」と大八木さん。「胃が痛くなるー」と原さん。最後は花尾さんが意地の走りで優勝のゴールテープを切りました。「勝つとは思わなかっね」と大八木さんは少年のような表情で。こんな監督達の熱さが世界的な選手を育てているのだと気づきます。
(共同通信/2021年11月8日配信)