明るい笑顔でいつもお日さまのように周りを照らす、道下美里さん。東京パラリンピック、陸上の大トリ、マラソンで見事金メダルを獲得しました。道下さんがゴールする直前、曇り空からお日さまが現れて、ふわっと走路に明るい光が。私は解説しながら「みっちゃんはお日さまからも愛されている」と思い、体が震えてしまいました。
ゴール後、サブトラックへ向かう道下さんを追いかけてお祝いを言うと、「増田さーん、ありがとうございます。やっと唐揚げが食べられます」と満面の笑みで。私がよく彼女が唐揚げ好きのことを小ネタで話すからです。選手村には唐揚げも並んでいましたが、胃がもたれてはいけないとじっとガマン。「僕が変わりに食べました」と隣で伴走の志田淳さん。
道下さんは優勝後のインタビューで「最高の伴走者、最強のチーム」と話しました。それは、サザエさん一家のような暖かい環境にあると思います。彼女は日本ブラインドマラソン協会の合宿を通して強化を図ってきました。その合宿には道下さんはじめ西島美保子さんや藤井由美子さん、男子マラソンで銅メダルを獲得した堀越信司さんらが参加。また伴走の山口遥さんや川口恵さん、大学生や実業団の選手も交代で。「20代から60代までいますからいつも賑やかですよ」と、強化委員長の安田享平さんは話します。
私も千葉の富津で行われた合宿にお邪魔しましたが、練習の前後に皆が和気あいあいとお喋りする姿に心が和みました。そんな中で厳しい練習を積み重ねるうちに伴走者までが自己ベストを。
道下さんの金メダルは、マラソンオールジャパンが成し遂げたもの。その明い空気を作っているのが、お日さまみっちゃんなのです。
(共同通信/2021年9月6日配信)