「野生のプリンセス」と、私が勝手にキャッチフレーズを付けている一山麻緒さん(24歳・ワコール)。東京五輪女子マラソン代表です。豹のようなしなやかな動きでハードなトレーニングに挑む姿には底知れぬ強さを感じます。
昨年3月の名古屋ウィメンズマラソンでは雨の中、ケニア、エチオピアの選手を置きざりにし2時間20分29秒で優勝しました。そしてレースを終えると(練習後も)、好きな香りに包まれながらスキンケアをする至福の時間を大切にしています。オンとオフがはっきりとした魅力的な選手です。
本番まで約2カ月となった6月上旬、長野県の菅平高原で合宿中の麻緒さんのもとへ。ちょうど42.195㎞を走る日でした。日差しは強いものの、涼やかな風が吹く自然公園前がスタートで、鳥や虫たちも麻緒さんを応援するように鳴いていたのです。
彼女は永山忠幸監督から出されたタイムよりも速いペースで進み、予定通りに完走。「最近は心技体がいい感じにかみ合ってきましたね」と永山さんも満足気でした。お話を伺いながら、東京五輪の1年延期は、選手も指導者もモチベーションを維持するのがいかに大変かが分かりました。加えて五輪開催について色々な声が聞こえてくる中、ブレずに目標へ向かうタフさも求められます。「一山はラストシンデレラ(MGCの後の選考大会で、最後の1人に決まった)だから気楽にいきますよ」と永山さん。でも順調な練習をみていると、五輪本番では主導権を握りそうな気もしてきます。
そして「福士と言う参考書があるのがありがたい」と永山さんがいうように、チームの先輩の福士加代子さんからマラソンを学んできたのも強みでしょう。本番が楽しみです。
(共同通信/2021年6月14日配信)