「日本記録は出せなかったですが、きっと怪我の功名になる!」と瀬古利彦さん。1月31日に開催された大阪国際女子マラソンレース後の記者会見でのことです。東京五輪日本代表の一山麻緒さん(23歳・ワコール)と前田穂南さん(24歳・天満屋)が日本記録に挑みました。そのペースはスタートから1㎞を3分18秒で走り続ける大変速いものです。その結果、前田さんが13㎞で離れ、25㎞からは一山さんのペースも遅くなり、2人とも日本記録は叶いませんでした。それでも一山さんは大会記録を更新。前田さんも自己ベストを更新。「課題もみえて、これからやるべきことが分かりました」と武冨豊監督(天満屋)も話すように、東京五輪へ向けて今だから出来るチャレンジを行うことが出来ました。
実は、コロナ禍で緊急事態宣言が出される中、沿道の人混みを危惧して、大会中止も検討されていました。一山さんも前田さんも東京五輪前に海外のマラソンを走る予定でしたが、その多くが中止。そこで大阪国際女子マラソンの大会事務局は、万が一に備えて長居公園の周回コースを計測し、世界陸連の公認を取得。約2.8㎞の長居公園を約15周するコースで無事開催されたのです。
例年ペースメーカーは海外女子選手に依頼していましたが、来日出来ないため、川内優輝さんら国内男子選手を起用。川内さんは「コロナ禍で不安な毎日を送る人が、選手から元気をもらって欲しい」と、何日もペースメークの練習を行ったそうです。皆が一丸となった舞台でした。「チャンスを作って頂いたのに申し訳ないです」とレース後に一山さん。いえいえ、東京オリンピックへまた大きな一歩を踏み出しましたよ。
(共同通信/2021年2月1日配信)