昨年12月に開催された防府読売マラソンで、自らが持つ2時間54分22秒の世界記録(マラソン視覚障がいT12クラス)を9秒更新した道下美里さん(44)。年が明けた1月上旬、RKB毎日放送(福岡)の仕事でお会いしました。「みっちゃん、おめでとう、ヨカッタね!」と祝福すると「ハイ、ありがとうございます。でも後半バテバテで…」と。明るい声に、笑みを絶やさない可愛いお顔。私は道下さんと会うといつも幸せな気持ちになります。
道下さんは、昨年11月にトラックの5000mで自己ベストを更新。スピードにも自信がつき、本当は防府のマラソンを2時間52分台で走りたかったのです。でも35㎞から失速。風も失速の原因だと思いますが、「最後の調整練習を軽くし過ぎたことを反省しています」と分析。この経験が、今夏の東京パラリンピックに生かされるに違いありません。
ところで、道下さんがどんどん向上する理由は、ご主人の力にあると思います。1歳年上のご主人の孝幸さんは学生時代、バイト先で初めて美里さんと出会った時に一目惚れしたそうです。それから8年後に再会した時、視覚障がいの病気を発症していた美里さんにすぐプロポーズ。それから今日まで彼女を支えています。
道下さんは合宿も多く一年の半分位家を空けます。また大会では男性のランナーに伴走されることも。「ご主人、やきもち焼かない?」と聞くと、「全然ですよー」と。孝幸さんは、夢を走り続ける美里さんが大好きなのです。そして負けず嫌いな彼女と就寝前に一緒に腹筋する時も「必ず、わたしの前にやめてくれます」と。人生の伴走者、孝幸さんの存在が一番大きいでしょう。みっちゃん、東京パラで金メダルを獲ったら、孝幸さんの首にかけてあげてね。
(共同通信/2021年1月18日配信)