先日、長野市オリンピック記念アリーナで開催されたスピードスケートの今季開幕戦、全日本距離別選手権で小平奈緒さんが引退。500mで8連覇を果たし、有終の美を飾りました。シーズン終わりで引退する例が多い中、初戦を選んだのは地元の長野にこだわったからでしょう。観客席は1998年の長野オリンピック以来の満員に。
小平さんは来てくれた観客の期待に応えるように、引退レースにピークを合わせ、勝負にいって勝ち切りました。この引き際も彼女らしいなと感じたのです。ちなみに私の引退レースは途中棄権で、体はボロボロ(足に7か所の疲労骨折)の状態でしたから。美しい引き際ではありませんでした。でも五輪で金メダルに輝いた選手が、最後も勝って有終の美を飾るケースの方が少ないと思います。引退のタイミングを見極め、そこに向けて最大の準備をする。それを実現できる聡明さも小平さんが多くの人から愛される理由でしょう。そして小平さんを長年支えてきた地元の相澤病院も素晴らしいと思います。
ライバルであったイ・サンファさんと国境を越えた友情も感動を呼びました。平昌オリンピックでは、自分がオリンピックレコードでトップに立つ滑りを見せた後、盛り上がる日本の応援団に対して「シィー」と口に指を当て、次に滑る選手に配慮した場面は記憶に新しいです。そして今回も同じようなシーンを画面が映し出していました。こんなお人柄が清々しいです。
小平さんの座右の銘は「明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ」というガンジーの言葉。これからやりたいことがあるようです。むしろ次のステージが楽しみです。小平さん、夢を走り続けてくださいね。
(共同通信/2022年10月24日配信)