桜前線北上中、スポーツ界も華やいでいます。千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手(20歳)がオリックス戦で完全試合(1人のランナーも出さない)を達成。28年ぶりの快挙です。涼やかな顔にサムライのように鋭い目。佐々木さんの活躍に元気をもらった人は多いでしょう。
彼のこれまでの歩みを知っている人も多いはず。岩手県陸前高田市の出身で、9歳の時に東日本大震災で父と祖父母を亡くしました。私の甥っ子が今11歳。同じ位の年齢で父親を亡くすことを想像すると、彼がどれほどの悲しみを乗り越えてきたのかと、胸が熱くなります。
震災後は大船渡市へ移り、中学高校時代を過ごしました。女子マラソン界のパイオニアの佐々木七恵さん(ロサンゼルス五輪女子マラソン日本代表)と同じ故郷であることにも親しみを感じていました。
そんなわけで千葉出身の私は、大船渡から千葉ロッテに入団した佐々木さんにずっと注目。でも1年目は試合で投げる姿を見ることがなく、がっかり。2年目の昨シ-ズンは一軍で投げる姿を時々見ることが出来たものの、思ったほどの活躍ではありませんでした。勝手に母親のような気持ちで、プロの世界の厳しさを感じていたのです。
ところが、実は大切に育てられていたことを今回の快挙で知りました。吉井理人コーチのもと、1年目はカラダづくりに集中。2年目はフォーム修正など、将来を見据えてじっくり育成されていたのです。そして3年目の今年、エースとしての才能を開花。
目先の結果ばかりを求めていたら、この偉業は成し得ません。焦らずに基礎から時間をかけて作り直せたのは、吉井さんへの深い信頼があったから。佐々木さんの努力と、吉井さんの愛情を感じます。
(共同通信/2022年4月11日配信)