穏やかな春の陽ざしに道端の菜の花が風に揺れていた3月13日、千葉県総合スポーツセンター陸上競技場で「2021日本ID(知的障がい)陸上選手権」が開催されました。昨年秋、金沢市で予定されていたものが延期となり、千葉市が舞台となったのです。千葉県生まれの私としては、全国から集まった選手や関係者を「千葉らしい温かさ」でおもてなししていたことが嬉しかったです。
事務局長の浅野武男さんは、地元企業の南総運輸株式会社はじめ25の会社に声をかけて協賛を頂きました。その方々が競技を観に来てくださり「テレビで観るより選手の緊張感が伝わりますね」と今井利彦さん(南総運輸社長)も楽しそうでした。
また千葉陸上競技協会の方々の中には「明美ちゃんさ、高校の時ほんとすごかったよね」と当時を懐かしみ私に話しかけてくる人もたくさん。順天堂大学陸上部や東京福祉専門学校の皆さんがボランティアで走りまわり、皆が一体となった千葉の底力が出ていたのです。
そんな中、東京パラリンピックでも活躍した岩田悠希さん(千葉県流山市)が、1万mで30分37秒49の世界記録(WPA・世界パラ陸上競技連盟公認)を達成。そして酒井園実さん、中田裕美さんがアジア記録を達成。「がんばりました。でも記録がよくなかったです!」と岩田さん。自閉症の岩田さんは記録に対するこだわりが強く、時刻表を片手に乗り継ぎの時間を細かく刻みながら一人旅が趣味の人。実は彼の自己ベストは松戸で出した29分35秒21、ただその記録はWPAの公認ではなかったのです。
「ベストよりも1分14秒28も遅かった」と悔しがる岩田さん。そんな伸びしろ王子、千葉からパリパラリンピックへの一歩を踏み出しました。
(共同通信/2022年3月14日配信)