桜の蕾も膨らんできた3月6日、東京の街が久しぶりに賑やかに。昨秋から延期された東京マラソンが、約1万9千人の足音と共に開催されたのです。
男子の日本人トップは鈴木健吾さん(富士通)、女子は一山麻緒さ(ワコール)と、ご夫婦です。お2人の記録を足すと4時間26分30秒で、同一大会での夫婦合計タイムはギネス記録!
実は大会2日前の記者会見で、私は2人に「今、ご夫妻のマラソンギネス世界記録はケニア人ご夫妻がもっています。破る可能性があるのでは?」と聞きました。すると「微塵もありません」とムッとした表情で鈴木さんに言われ、「失礼しました」と謝りました。その時は鈴木さん調子悪いのかな?と思ったのですが、レース後に「(昨年3月に)日本記録を出してからこの一年は本当に苦しかった」と、プレッシャーを感じていた胸の内を話し大粒の涙を。その姿をみて、あんな質問して申し訳なかったと思いました。でも鈴木さんがプレッシャーを克服してがんばれたのは、隣にいる麻緒さんも同じように自分と戦っていたからだと思います。お互いが高いレベルで高め合えるステキなご夫婦。ゴール後に抱擁する姿に涙がこぼれました。
そして13年ぶりにマラソンを走った新谷仁美さんが、いきなり日本歴代6位。「レース後のことは白紙です」と退路をたってのスタートでした。東京五輪の女子1万mで21位と惨敗し、それを払拭しようと再びマラソンに挑戦。一山さんの後ろでずっと一緒に走っていたことが心強かったと思います。コーチの横田さんは元800mの日本記録保持者で、「私はマラソンの指導はよく分からない」と謙遜していましたが、素晴らしい采配を発揮されました。
(共同通信/2022年3月7日配信)