ミュンヘンオリンピック(1972年)で日本男子バレーボールを金メダルに導いた、今は亡き松平康隆監督と会議で何度かご一緒したことがあります。松平さんは「最近は審判にイチャモンをつけ過ぎです。よくないですね」と言われていました。審判を信じることは日本人の美学だと私も感じていたのです。でも北京五輪を観ていたら、天国の松平さんもさすがにイチャモンをつけたくなるのではないでしょうか。
スノーボードの男子ハーフパイプでは、平野歩夢さんの決勝2回目の演技が、異様に低い得点で首をかしげてしまいました。またスノーボードの女子パラレル大回転は、不可解な判定で竹内智香さんが敗退。対戦相手はドイツ人選手で、審判の8人中6人がドイツ人だったというは中立性に問題ありです。更にスピードスケートのショートトラックでの相次ぐ失格判定に、中国に有利な判定が多いと韓国選手団が記者会見を開きました。今回の五輪ほど審判の判定が物議をかもした大会はありません。
こんなことが続くと、もっと映像やAIの最先端技術を取り入れた方がよいのではと思います。テニスやサッカーなどのプロスポーツでは、VTR判定を導入。体操競技など技術を競うものはAI(人工知能)によって採点するシステムも出来ています。
やるせない気持ちになる選手が増えては気の毒。芸術点は人の目を生かしつつも、技術の部分はAIが判定する方が公正さを保てるのではないでしょうか。
プロスポーツの審判と違い、オリンピックは資格を得たスポーツ団体のアマチュア審判員が担うことがほとんどです。選手達が人生をかけた目標の舞台、判定について踏み込んで考える時です。
(共同通信/2022年2月21日配信)