胴上げの手が初空を掴んだのは、ホンダチームでした。2022年、寅年最初の日本一決定戦はニューイヤー駅伝(全日本実業団駅伝)。二強と言われた富士通、旭化成を打ち破り、ホンダが創部51年目にして初優勝しました。「虎視眈々と狙っていましたね」と、私は中継のリポートを。ホンダは東京オリンピックに伊藤達彦さん(1万m)と青木涼真さん(3千m障害)の2人が出場し、設楽悠太さんをはじめマラソンランナーも育てています。トヨタ自動車も含めて四強時代になりそうです。
その後次々とゴールする選手達をゴールで見守っていると、ベンチコートを準備した女性が遠慮がちに最後の選手を迎えました。武田薬品チームのマネージャーさんです。武田薬品工業陸上部は、山口県光市の工場で医薬品製造に従事しているメンバーで構成。専用グラウンドもなく、シフト勤務もありメンバーが揃って練習することも少ないそうです。つくづく実業団には色々なチームがあるなと感じました。
そう、大会前日の練習場でお会いしたのは大阪府警チーム。地区予選で大阪ガスを破っての出場です。監督の伐栗直樹さんに目標を伺うと、「明日はスピード違反をして、犯人を追うように走ります」と。とっても面白い方でした。いつもなら大晦日に大阪の戎橋で新年のカウントダウンの警備をしているそうです。「走らせて貰うからにはがんばりますよ。うちのチームはハッピー度ではナンバーワンですわ」と伐栗さん。新婚ホヤホヤの選手や子どもが生まれたばかりの選手がいました。そんな選手を私に紹介するたびに大きな笑いが。その大阪府警を応援していましたが、順位は34位。あっぱれ、大あっぱれです。
(共同通信/2022年1月7日配信)