3月5日、東京マラソンに約3万8千人のランナーが出場。今年は海外からの参加者が多く、コロナ前の状態に戻ってきた感がありました。
私は女子のレースをフジテレビのオンデマンド放送で解説。今回のレース、男子も女子も日本記録を更新することが目的でした。そのため女子ではペースメーカーが1㎞3分17秒から18秒を刻み、フィニッシュタイムは2時間18分台です。
ペースメーカーはマラソン未経験のケニアの若い女子選手2名と日本の男子選手1名が務めました。でもケニアの2人は先輩に急かされたのか、予定を大きく上回るペースで集団の先頭を走ったのです。嫌な予感はしていました。前日の記者会見でアフリカの選手たちが「そのペースは遅過ぎる」と話していたのです。
集団も早々にバラけ、ペースメーカーの男子選手もどこを走ればいいか迷っているようでした。日本記録を狙うレースのはずなのに、松田さんの前には誰もいなくなってしまったのです。それでも松田瑞生さんは前半そのハイペースに対応し、15㎞地点では日本記録ペースを16秒上回る勢い。でもその後先頭集団から遅れ、後半失速し2時間21分44秒でのフィニッシュ。「ハイペースについていけなかったのは自分の弱さ。世界の壁の高さに痛感した」と、目にいっぱい涙を浮かべて話したのです。ペースメーカーのことを言い訳にしないのが立派だなと思いました。
松田さんが言うように、確かに世界の壁は厚い。彼女の自己ベスト2時間20分52秒は、昨年世界でマークされた記録の中で38位です。だからこそ日本記録を破って風穴をあけていく必要があります。松田さんは、この悔しさを8月の世界選手権、10月のMGCにぶつけるでしょう。
(共同通信/2023年3月6日配信)