春一番が吹いた2月19日、3年ぶりに開催された北九州マラソンには、およそ11,000人のランナーが集いました。スタート時はまさにニッポンの元気の象徴で、色とりどりのユニフォームのランナーたちは躍る花のよう。その姿と、プログラムの表紙の絵がマッチしてみえたので、私は心が震えてしまいました。
大会前日、大会のメインビジュアルであるその絵を描いた黒田征太郎さん(84歳)と、北九州が故郷の君原健二さんとのトークショーが。14年前から北九州にお住まいの黒田さんは「君原さんと会えて、私は五輪を応援した頃の少年の心に戻れます」と話しました。そして「私は走りませんが、ランナーたちの心の自由を描きたかった」と。黒田さんのシューズには赤、青、黄色の飛び散った絵の具がついています。製作過程で付いたもので、それは洋服にも。日常の姿のままなのですが、オシャレなデザインのようでステキ。
「自然と仲良くやっていかなきゃいけないのがマラソン。人は生まれた時から走り続けています」と黒田さん。お話しを聞いていると、マラソンの世界が深く哲学的になっていき、興奮しました。君原さんがいくつもの挫折を乗り越えた話しをした後、司会者から黒田さんが乗り越えてきたものについて聞かれると、「乗り越えたものはないなぁ。好きでずっと書き続けてきたから。ランナーの皆さんも好きだから走り続けられるのだと思います」と。
黒田さんとお話しした翌日。大会でランナーの皆さんの表情がより解放的にみえました。コロナ禍で、大会に参加出来なかった渇望感もあるでしょう。関門海峡の冷たい風にも負けず、ゴールには笑顔の花がたくさん咲いていました。
(共同通信/2023年2月20日配信)