34年ぶりに東京で世界陸上競技選手権大会が開催。オリンピック、パラリンピックでは無観客だった国立競技場に、多くの観客が訪れるでしょう。
私は常々競技場の中には社会の縮図があると感じています。視覚障がい者と伴走者の走りに共生社会を、車いすや義足の進化に技術革新を感じ驚きます。
そして今回の世界陸上には大きなトピックが。女子の競技に参加する選手全員に、遺伝子検査を義務化したのです。世界陸連が新たな規則として承認した「女性カテゴリーの出場資格」に、日本も対応するというもの。オリンピックが掲げた多様性のある社会に逆行しているようにも見えますが、これは「女子競技の公平性を保つ」ことが目的なのです。
思い出すのは、今から40年以上も前のこと。日本記録を次々と塗りかえていた私は「男じゃないの?」と疑われ、大学病院で検査を受けました。今のような頬内側の粘膜と血液検査ではなく・・・。でも「女性」として認められて、ホッとしました。
パリ五輪の女子ボクシングで、対戦相手の性別に疑問を感じて棄権したケースが。スポーツでは女性を保護しないと、体格差からも圧倒的に不利です。
競技場の中に社会を見るいう面では、今後の発展途上国やイスラム圏の女子の参加率にも注目しています。スポーツへの女子の参加は、その国の成熟度を表すから。日本の女子で初めて五輪に出場した人見絹枝さん(1928年アムステルダム五輪女子800m銀メダル)。当時は「女性が肌を見せて競技するなんて…」という声もあったそう。でもゴール後、他の選手が仰向けに倒れるなか、一人うつ伏せに倒れると「さすが大和なでしこ。倒れる姿も美しい」と。進化の道は続いていきます。
(共同通信/2025年9月12日配信)