松尾芭蕉が松島に向かうため仙台を出発する際に「あやめ草 足に結ばん 草鞋の緒」と詠みました。6月7、8日に開催された2025ジャパンパラ陸上競技大会(主催は日本パラスポーツ協会)、私はこの句を紹介しながら「選手の皆さ~ん、シューズの紐はしっかり結びましたか?」と挨拶。
今年は日本パラスポーツ協会が60周年を迎えたこともあり、弘進ゴムアスリートパーク仙台には、会長の森和之さんはじめ多くの関係者が集まっていました。青空に映えるブルートラックで、選手達がウォーミングアップアップを。知的障がいの走り幅跳びに出場する酒井園美さんは「あと2cm、超えられるようがんばります」と元気いっぱい。今夏インドで開催される世界パラ陸上の標準記録の突破がかかっているのです。
にこやかな表情で現れたのは小松沙季さん(30歳)です。パリパラリンピックにはカヌーで出場しました。その後、陸上競技に転向し、4月の日本選手権(松山市)でいきなり14m66㎝の日本記録で鮮烈なデビューを。松山では、日本パラ陸連アドバイザーの石井田茂夫さん(びわこ成蹊スポーツ大)から、技術的な指導を受けていました。大学、実業団とバレーボールをしていたという小松さん。「手首を下向きに使うバレーの癖を上向きに変えるといいですよ。伸びしろ大です」と石井田さんも興奮気味に話していたのです。
この日、小松さんは自身がもつ日本記録を2m33㎝更新し、16m99㎝を投げました。驚くべき日本記録!笑顔が魅力的な小松さん。「パラ陸上の北口榛花さんね」と私が言うと、「嬉し~。北口さんのように周りの人をワクワクさせられる選手になりたいです」とにっこり。すごい選手が現れました。
(共同通信/2025年6月9日配信)