芸術の秋、10月初旬に名誉都民の顕彰式に出席しました。昨年から私は審査委員に加わり、残間里江子さんや渡辺えりさんとご一緒しています。
今年、選考会でえりさんが推薦した方が、江戸糸あやつり人形の伝統芸能を受け継いでいる両川船遊さん(80歳)です。「話しながら糸を操る大変な芸術で、400年の歴史を受け継いでいます。両川さんはお年なので早くあげないと、死んでしまいます」とえり節に皆大笑いでした。文句なしで両川さんは選ばれました。
そして顕彰式には小池百合子都知事が杖をついていらっしゃり「三本足の生活にも慣れてきました。」とユーモアたっぷりにお話しされたのです。俳優の仲代達也さん、多摩織伝統工芸士の澤井伸さんに怪我のことで色々質問された小池さん。始球式の時、マウンドの傾斜のあるところで足が滑ってしまい、踏ん張った時に足を剥離骨折してしまったそうです。「スパイクを履いておけば良かったですね」と小池さんは話し、「皆さんは転ばないように気をつけてくださいね」と、チャーミングな方でした。
顕彰式は、92歳の仲代さんが長身で姿勢がよくカッコ良く、今も現役でいらっしゃるのがステキです。そして両川さんは「いつもは人形の後ろに居て目立っちゃいけないのに、今日は目立って家族に叱られます」と味があります。
その数日後、世田谷の劇場に江戸糸あやつり人形の舞台「星の王子さま」を残間さんと観にいきました。演出は渡辺えりさんです。両川さんが中学生役で出演されて可愛らしく、足、手、頭の全てを余すことなく使うエネルギーに頭が下がりました。しなやかに全身を使っていらっしゃる両川さんは、きっと長生きすると思いました。
(共同通信/2024年10月11日配信)