「人生が足りないです」と笑顔で話す北畑耕一さんは、91歳。背筋がピンと伸びていて、品のいいダンディーな方でした。この日、月刊「ランナーズ」の対談でお会いし、私は凄く刺激を受けました。北畑さん、1月に鹿児島「いぶすき菜の花マラソン」を7時間6分で走り、「4月はパリマラソンを走りますよ」と楽しそう。私との対談で準備されたメモは、全てフランス語。「英語は出来ますのでフランス語にも慣れないとね」と、明るく話すのでした。
伊藤忠商事に勤務していた頃は、パリやニューヨークでの生活が長かったようです。70歳で引退し、お茶など趣味の世界も忙しく、週に何度か水泳も。でも白内障になり、病院の先生から他のスポーツを勧められたそうです。
そして陸に上がり、74歳の時にマラソンをスタート。「週2回、家の近くの公園を走ります」と。アップダウンの道を10㎞ほど走っています。そして旅するように、海外マラソンを楽しんでいるのです。昨年のシドニーマラソンでは「オーストラリアで暮らす孫が応援に来てくれました」と。また85歳で走ったニューヨークマラソン(6時間45分で完走)では、年代別の表彰で優勝。「テァファニーのお皿を頂きましたよ」と。背中のナンバーに年齢が書かれているので、北畑さんを追い抜くランナーから「オー、グレイト!」と、声を掛けられることも少なくないようです。
「日本のマラソンは制限時間で切られてしまうので厳しいです」と。パリやニューヨークでは制限時間を越えても歩道を走れるのでゴール出来ます。「ゴール出来るかどうかは、天と地の差がありますからね」と北畑さん。超人から、知的好奇心と、運動習慣の大切さを学びました。
(共同通信/2025年2月21日配信)