41回目を迎えた大分国際車いすマラソン。今年は役者が揃いました。東京パラリンピックで、800m、1500m、5千m、マラソンの4つの金メダルを獲得したマルセル・フグさん(36歳・スイス)に、同大会400m金、マラソン銅のダニエル・ロマンチュクさん(24歳・米国)。また、日本のエース鈴木朋樹さんなど。「出来る限りフグさんに付いていきます!」とやる気満々だった鈴木さんですが、スタートして一瞬主導権を握るも、4キロ過ぎからフグさんの一人旅に。ロマンチュクさんも置いていかれ、フグさんは2位の鈴木さんに3分以上の差を付けて圧勝。とんでもなく強い人です。
私は大分放送のスタジオで映像を観ながらゲスト解説。フグさんのこぎ方が他の選手と違うことに気づきました。殆どの選手が2、3回こいで休んでいるのに、フグさんは10~20回連続でこぐのです。そのことを解説の花岡伸和さんにぶつけると「連続動作のほうが効率もいいし、スピードも出ます。でも習得するのはかなり大変」と。
そんなフグさんを25年にわたり指導しているのが、コーチのポール・オダーマットさん。笑みを絶やさない穏やかな人です。フグさんが10歳の時、車いす陸上の聖地ノットウィルから10㎞ほど離れたシェンコン村で出会ったそう。子ども20人ほどのレースで、ポールさんは一目でフグさんの才能に気づきました。「マルセルはその頃から今も、控えめで真面目」と話すポールさん。スイスでは大小様々な陸上の大会が各地で開催され、車いすの部も一緒にあるそう。
ゴール後に、親子のように談話する2人をみて、日本でも車いすの子どもが気軽に参加できる大会が増えて欲しいと思いました。
(共同通信/2022年11月21日配信)