定禅寺通り(仙台市)の新緑の中を、ピンクのユニフォーム姿が花を咲かせるように駆け抜けました。5月8日、仙台国際ハーフマラソンで前田穂南さん(天満屋)が優勝。東京五輪女子マラソンから9ヶ月ぶりのレースでしたが、前田さんは10㎞以降ペースアップし独走体制に。同僚の松下菜摘さんや大東優奈さんを置き去りにしました。
前半には向かい風が強く吹く中で、1時間09分08秒の自己ベストタイの記録は立派。さぞかし喜んでいると思いきや、ゴール後なぜかうかない表情。それは「電光掲示板に11とあり、11分かかったのかと思いました」と前田さん。どうやら時計とタイムを見間違えたようです。相変わらずの天然ぶりが、可愛いー。
彼女のここまでの道のりが正にマラソンでした。東京五輪後、右足の踵とアキレス腱の痛みで、約3ヶ月間は歩くことと軽いジョギングしか出来ませんでした。今年1月からようやく走れるようになり、3月に入って本格的な練習メニューに。
監督の武冨豊さんは、広島の道後山高原のクロスカントリーで前田さんが3時間黙々と走る姿に、「ひと皮むけた」と思ったそうです。また「松下さんや谷本観月さんが(今年1月の大阪国際女子マラソンで)彼女のマラソンの記録を上回ったことも刺激になったでしょう」と話します。
この後、3年ぶりにアメリカ・アルバカーキに合宿に行きます。前田さんが「強くなれる場所」と、第2の故郷と思っている所です。そして8月に北海道マラソンを走る予定。いよいよです!東京五輪延期への対応や故障を乗り越えて、「これからは何でも対応できる」と前田さん。更に強くなり、杜の都仙台から、花の都パリへと一歩を踏み出しました。
(共同通信/2022年5月9日配信)