「浪速のど根性走りみせます!」と大会前に話していた松田瑞生さん。1月30日、正にその通りの走りで優勝。1㎞を3分20秒(同じペースで走れば2時間20分半ば)のハイペースを神野大地さんらの3人のペースメーカーが刻み、その船に乗るようにスムーズな走りを押し通したのです。宮崎の合宿地などで月間1400㎞走り込んだスタミナ、強い脚が際立つ走りでした。最後は少し失速しましたが堂々の2時間20分52秒、自己ベストを55秒上回ってゴール。
私はライブ配信で森脇健児さんたちと解説を。ゴール後、大喜びかと思いきや松田さんの第一声が「悔しいです!」と。「えっ?」と一瞬耳を疑いました。後でそれは東京五輪前に名古屋で一山麻緒さんが出した記録に及ばないことが悔しかったんだと分かりました。「オリンピックを走りたかった」と正直に話す松田さんの、補欠で走れなかった悔しさがバネになっていたのでしょう。本当にすごい根性の選手です。レース後お母さんの明美さんにお会いすると「瑞生、足がつって上手く歩けへんね」と。全力を出し切った証です。
そして「全力で楽しみたい」と言ってラストランのハーフマラソンを走った福士加代子さん。後半少し歩くことも。「キツかったぁ」と、ゴール後いつもの笑顔。「颯爽と終わるより加代子ちゃんらしいよ」と話すと「そうですよね、ハハハハ」と今度は大笑い。5千mは18年間、3千mは16年間、ハーフは13年間日本記録を保持しました。そしてマラソンではリオ五輪代表に至るまで、レース中の走りを通して、その厳しさも素晴らしさも教えてくれました。福士さん、陸上界を朗らかにしてくれて、ありがとう。益々幸せにね。
(共同通信/2022年1月31日配信)