プリンセス駅伝(実業団女子駅伝予選会)のスタート・フィニッシュ地点となる福岡県宗像市の宗像ユリックス。木々が色づき始めた10月24日、31チームがスタートを切りました。今年は昨年40回の記念大会増枠分(6チーム)の持ち越しをうけて20チームがクイーンズ駅伝(全国大会)へ進めます。私はスタート地点で選手の表情をみつめましたが、緊張がうつりそうでした。東京オリンピックの熱がそのまま駅伝につながっているように感じたからです。 予想通り、1区(7㎞)から速いペースで展開。それでも集団は大きく、資生堂の木村友香さんが4㎞過ぎから切れのあるスパートを。その表情は鬼の形相のようで、すごい気迫でした。彼女は区間新記録の走りで2区にタスキを渡し、その流れを止めることなく資生堂は3区以降後続を大きく引き離して優勝を果たしたのです。正に「悔しさをバネに」した木村さん。昨年はこの大会で足の痛みをこらえながら走り順位を落とし、クイーンズ駅伝ではアンカーで5人に抜かれシードを落としてしました。レース後、泣いて泣いて目は真っ赤っか。どんなに苦しかったことでしょう。今年はキャプテンとなり、レース後「記録や自分の結果よりも後続の選手が気楽に走れればいいと思いました」と話しました。 私は彼女のお母さん明美さんとNECの陸上部でチームメイトだったこともあり、友香さんを子どもの頃から知っています。昔から真っ直な性格の友香さんですが、今回、わずか1年で人はこんなにも成長するのかと嬉しくなりました。強さに優しさが増したのです。ヨカッタねとお母さんに電話をすると、「嬉しくて今、私も走っていました」と明美さん。心も色づきます。
(共同通信/2021年10月25日配信)