大阪岸和田のだんじり祭は、日本を代表する威勢のいいお祭りです。コロナ禍で、昨年はだんじりの曳行無しでの宮入り(鎮守の神様にお参りする神事)でしたが、今年は悩みながらも話し合いを重ねて、曳行を決めたそうです。その様子を「岸和田だんじり祭2021」という番組が紹介し、私はナレーションを担当。曳行を決断した理由を知ることで、何故だんじり祭が300年以上も愛され受け継がれているのかがよく分かりました。 始まりは1703年、元禄時代。時の岸和田藩主岡部長泰が京都伏見稲荷を城内に勧請し、五穀豊穣を祈願したそうです。当初は狂言や舞いを披露していましたが、後に地車に太鼓や鐘を乗せて町を周るようになり現在のカタチへ。 だんじりから離れた綱先で曳くのは子ども達。綱中は若者、綱元はベテランががんばります。そしてだんじりの前後には前梃子と後梃子、上には大工方と、それぞれが全力で自分の役割をこなしているのです。「だんじりがあるから皆の絆が深まり、地域で困った人がいたらすぐ助けようと一つになれるのです」と下野町の曳行責任者の品川裕昭さん。2018年、関西が台風23号の被害に遭った時もすぐにトラックを出して、皆でがれきを回収したそうです。 今年は22の町それぞれの判断に任せ、17の町が曳行を実施。4トンものだんじりが猛スピードで角を曲がる「やりまわし」はすごい迫力でした。宮入り時には、だんじりの後ろから吹きちりが尾っぽのように風に揺れていました。「吹きちりには、色んな疫病を逃がす願いが込められています。今年のだんじりの象徴ですわ」と品川さん。祭りで地域の絆が深まっていることに感動しました。
(共同通信/2021年10月4日配信)