佐藤友祈さんの後ろに束ねた青い髪が嬉しそうに揺れているように見えました。8月29日、東京パラリンピック男子1500mで見事優勝した友祈さん。ゴール近くのスタンドで日の丸を掲げていた私たちにガッツポーズで「やりました、ありがとうございました」と笑顔で応えてくれました。私の隣で平松竜司さん(日本パラ陸連強化副委員長)が涙、涙。
レースはまさに横綱相撲でした。スタートするや否やライバルのマーティン選手(米国・リオパラリンピック優勝)にぴったり後ろにつかれ、友祈さんは先頭に立ちました。風よけになることを心配しましたが、「大丈夫、予想通りです。本人も分かっています。最後も負けません」と平松さんは自信あり気に。そして彼が言う通り、友祈さんはラストも更にスピードを上げ、力強くゴールを駆け抜けたのです。上与那原寛和さんも自己ベストで3位に。金、銅と、本当に素晴らしいレースでした。
実は過去の大会の映像やデータを分析していた平松さん。友祈さんがマーティン選手に負けたレースは、牽制して後ろについた時だと分析。レース前夜にそのことを、友祈さんに伝えたそうです。そして最近のマーティン選手の調子から、最初から友祈さんが先頭でレースを引っ張っても、ラストで彼に負けることはないと説明。すると友祈さんは「分かりました」と穏やかな表情で答えたそうです。こんなチームプレーも功をなしたのだと思います。
友祈さん、選手村では妻・麻由子さんのお味噌汁が飲めなかったでしょう。彼の元気の元は、麻由子さんが鳥取の実家から送られるあわせ味噌で作る、毎朝具の違うお味噌汁。家に帰ったら、ゆっくり召し上がってくださいね。
(共同通信/2021年8月30日配信)