7月30日の夕方、女子5000m予選を解説するために競技場のスタンド席へ。国立競技場の周りでは蝉の大合唱。まるで無観客での競技を励ましているようでした。先に行われた男子3000m障害予選を高岡寿成さん(シドニー五輪1万m7位入賞)と観戦。「楽しみにしていて下さいって(三浦龍司さんを指導する)長門俊介監督が言っていましたよ」と高岡さん。
レースはその言葉通り、19歳の三浦さんが優勝候補のギルマさん(エチオピア)に挑む積極的な走りで、日本記録を更新!「この蒸し暑さの中で、やっぱり若いと暑さ感じないのかな」と私が言うと「子どもの時って暑くなかったですもんね」と高岡さんは笑いました。
すると、その後の女子5000m予選でも廣中璃梨佳さん(20歳)、萩谷楓さん(20歳)、田中希実さん(21歳)全員が、自己ベストを更新したのです。三浦さんの勢いをつなぐかのような若さ爆発の走り。決勝に進んだのは廣中さんだけでしたが、3人がそれぞれに個性を生かした爽やかなレースでした。
廣中さんはアフリカ勢が得意とする「スローペースでレースを進めて、ラスト一周のスパート勝負」を避けるために、最初から1㎞3分のハイペースで先頭を引っ張り、主導権を。田中さんは「ラスト1周で今の自分のスピードがどれだけ通用するか試したかった」と最後まで出ませんでした。これも新しいチャレンジ。また萩谷さんは「世界の壁は厚かったけど、勉強になった」と。大舞台で明るい笑顔の花。
そして三浦さんは決勝でも積極的な走りで、この種目初の6位入賞。廣中さんは9位ながら福士加代子さんが持っていた記録を16年ぶりに破って日本新記録をマーク。陸上界の歴史が動きました。
(共同通信/2021年8月3日配信)