びわの実が曇り空を明るく彩った5月30日、第一回世界オンライン句会が開催されました。主催したのは俳人の黛まどかさん。コロナ禍で人と人とのコミュニケーションが取りづらくなっている今、「俳句を通して世界と繋がりましょう」という主旨です。開催に向けてクラウドファンディングで支援者を集め、私はそのサポーターに。この日、京都市の嵐山祐斎亭から黛さんは着物姿で登場。黛さんの後ろの円窓からは新緑が眩しく見守っていて、まるで絵のように美しい風景でした。
句会のメンバーは、フランス、イタリア、ドイツ、日本の方々計9人。支援者はその句会の様子をオンラインで視聴出来ます。私も約2時間ずっと視聴を。兼題は「若葉」と「噴水」です。事前に作られた俳句(誰が作ったのか分からない)の選句が始まります。「臥す父に窓いっぱいの若葉かな」「噴水の仕舞いはお辞儀をするように」がいいなあと思っていたら、多くの人がその句を選んでいました。他の句も初夏のエネルギーに溢れ、噴水の涼しさも感じられる素晴らしい句ばかり。
フランス人のモニックさんは「フランス人ははっきりものを言うけど、俳句は引き算で余白を楽しんでいるのがいい」と。それぞれが選んだ句の感想を言い、それも楽しかったです。俳句は「座の文芸」といいますが、その様子をオンラインで試聴する面白みを感じました。
黛さんは最後の挨拶で松尾芭蕉の「夏炉冬扇」という言葉を紹介。時期はずれで役に立たないことの例えですが、「コロナ禍の中、俳句はワクチンのように役に立つものではありません。でも私は言葉の力を信じています」と締めました。心が元気になった人がいっぱいいると思います。
(共同通信/2021年5月31日配信)