薫風がバラの花の香りを運んでくれた5月16日、東日本実業団陸上が熊谷市で開催されました。その中で、パラの選手の競技も行われ、視覚障がい者の唐沢剣也選手(26)が5000mで世界新記録を樹立したのです。ケニア選手の持っていた世界記録を17年ぶりに更新。唐沢さんを指導する安田亨平さん(53)は「ガイドランナー2人(小林光二さん、清水崚汰さん)が素晴らしいアシストをしてくれたお陰です」と喜んでいました。東京パラリンピックをおよそ100日後に控え、唐沢さんはすごい自信になったことでしょう。
唐沢さんのような視覚障がい者にとって、伴走者の存在は欠かせません。時には寝食を共にしながら呼吸を合わせています。そんな姿を見ながら、私自身「人は皆1人では生きられない」と感じます。
そんなことを考える折りしも「インクルージョン完全版」という本が出版されました。作者は全盲の島信一朗さん(51)。視覚障がい者と健常者が一緒に映画を観るイベントを実施したり、函館アリーナの建設時に障がい者の利便性をアドバイスしたり、精力的に活動されています。そんな島さん、インクルージョンの本質は、尊厳、尊重、共存、共生であると言います。本の中には、ダイバーシティ、ジェンダーフリー、SDGsといったカタカナの言葉が多く出てきます。島さんが色々な実例をあげながら解説してくれるので、私もそれらの言葉をよく理解することが出来ました。
またコロナ禍における人との距離のとり方を、2匹のヤマアラシに例えている例え話が面白い。近づきすぎるとケガをするし、遠いと温もりを感じない。うーん分かり易い。モヤモヤしていた気持ちが明るくなり、満ち足りてくる本です。
(共同通信/2021年5月17日配信)