母の日、爽やかな新緑に包まれた仙台に、元気な足音が響き渡りました。仙台国際ハーフマラソン2025、約1万1千人のランナーが、定禅寺通りや青葉城を旅するように走ったのです。
気温20℃で曇り空と、天候にも恵まれランナーの皆さんに笑顔が多いなか、トップ争いは熾烈でした。女子は、鈴木亜由子さん(33歳・日本郵政グループ)とカプチッチ・セリーさん(39歳・九電工)がレース中盤から一騎打ちに。共に世界の舞台を何度も経験し、ハーフマラソンの自己ベストも1時間7分台とほぼ同じ。2人はスタート直後から並走し、セリーさんが出ると亜由子さんも出る。お互い譲らない気持ちのぶつかり合いでした。
このところ亜由子さんは故障に苦しみ、昨年は春のトラック1レースとクイーンズ駅伝(5区を激走しチームは優勝)しかレースに出ていません。「この大会で今の状態を知って、次を考えたい」と話していた亜由子さん。結果をみて、この後、海外のマラソンを走るか、トラックレースに出るか決めたかったようです。
この日、愛知県豊橋市から父・伸幸さんと母・由美子さんが応援に来ていました。間もなく90歳になる祖母の千枝子さんは「マラソンの孫の靴履きデイケアー器具の自転車10分を漕ぐ」と短歌で応援。とても温かい家族です。
競技場に入る直前で亜由子さんがスパート!足の返しの速いフォームに切り変わり、そのまま優勝のフィニッシュへ。授与された月桂冠が大きく感じられました。
私は解説を終えて、由美子さんの所へ行くと「良かったです。安心しました」と目に涙を浮かべていました。母の日に最高の贈り物になりました。亜由子さんの競技人生第2章が仙台から始まりそうです。
(共同通信/2025年5月12日配信)