1月14日に開催された全国女子駅伝は、1区の五島莉乃さんの走りに心が震えました。石川県星陵高校から中央大学へ進み今資生堂で活躍している五島さんは、ふるさと石川県チームで出場。競技場を出るとすぐに飛び出し、2位と大きく差を開いて独走したのです。「石川」の胸の文字が揺れる度に、五島さんの思いが伝わる魂の走りでした。
五島さんはお正月に石川県の実家に帰省し、帰りの新幹線の中で地震に見舞われ、12時間近く車中で過ごしたそうです。走り終えると、「石川県の皆さんに少しでも私たち走りが届いていると嬉しいです」と。笑顔から涙がこぼれていました。今も断水や停電、道路の寸断、余震に苦しむ石川の人たちにどれほど勇気を与えたことでしょう。
過去には箱根駅伝で5区の山登りを力走した柏原竜二さんが「私が苦しいのは1時間ちょっと。東日本大震災で被災した人たちに比べたら大したことはありません」と話したことを思い出します。2012年、なでしこジャパンの皆さんがアメリカとの決勝戦に勝利した時は、試合前に震災の様子のビデオをみて「皆でがんばろう」と心を1つにしました。苦しくても自分に負けないスポーツには、みている人を勇気づける力があるのだと思います。
全国女子駅伝は宮城が29年ぶり2度目の優勝を果たしました。8区の中学生男乕結衣さんは、区間新記録の走りで優勝に大きく貢献。東日本大震災の時には2歳だった男乕さんが、宮城県チームを代表する選手になったことも感慨深いです。
今年5月に神戸世界パラ陸上が開催されます。五島さんの走りをみて、「私たちもがんばろうね!」とパラの選手たちと気合を入れました。
(共同通信/2024年1月15日配信)