坊ちゃん列車が走る松山市は、街全体が平坦で高い建物も少なく、車窓からも優しい風景が広がります。正岡子規と夏目漱石が暮らした俳句の街でもあり、至る所に自作の句を入れる俳句ポストがあります。そんな文学の香り高い松山市のニンジニアスタジアムで、9月10日、中国・四国パラ陸上競技大会が開催されました。愛媛県で開催されるのは初めて。
地元出身で今年7月のパリ世界パラ陸上競技選手権の走り幅跳びで4位に入賞した石山大樹さん(23歳、弱視)が出場するとあり、メディアも観客も多かったです。石山さん、新田高校時代は三段跳でインターハイに出場。高校在学中、網膜色素変性症を発症し徐々に視力が落ち、パラ陸上の世界に入りました。現在は順天堂大学大学院で学びながらがんばる文武両道の選手。スター性があります。
この日、新田高校時代の陸上部の恩師水口剛先生が運営に携わり、石山さんと親睦を深めていました。驚いたのは、愛媛陸上競技協会の方々に混じり、松山東高校や新田高校など地元の高校7校がボランティアで参加してくれたことです。皆さん陸上部で、パラの選手をサポートするなか「車いすの選手が自分で車を運転してきて、車いすを手際よく出して競技して、また1人で帰っていく。カッコイイですね」と松山東高校の生徒が話しました。選手にとっても生徒にとってもお互いが高め合えるいい時間だったようです。
この日は世界自殺予防デーで、午後は「愛媛いのちの電話」主催の講演会でお話を。大会のことを伝えながら「誰もが誰かの伴走者ですね」と言うと拍手を頂きました。命を守る大変なお仕事をしている皆さんに、私も一句。「青みかん優しい風で色づけり」。
(共同通信/2023年9月11日配信)