パリ五輪まで2ヶ月を切りました。いつもは男子マラソンが大トリですが、今回は五輪史上初、女子マラソンが最後。フランス出身のアリス・ミリアさんを称えてのことでしょう。近代オリンピックの父・クーベルタン男爵は、女性が競技をすることを歓迎していなかったようです。それに異を唱えたのがミリアさん。彼女は国際女子スポーツ連盟を立ち上げ、女性の五輪出場に風穴を開けました。そして今回のパリ五輪から、アーティステックスイミングに男子選手の出場も認められることに。女性だけの競技に男性も参加する時代になり、男女共同参画がスポーツ界にも浸透しています。
私は特に水泳の池江璃花子さんに注目しています。彼女がまだ高校生だった頃、スポーツ関係の授賞式でお会いしました。礼儀正しく、透明感、清涼感に溢れていて「女神」「マーメイド」という言葉が自然と私の頭に浮かびました。その後、池江さんは東京五輪に向かう2019年に白血病を発症。1年余りの闘病生活の後、痩せた姿にムチ打ってトレーニングする姿に、涙がこぼれました。そして東京五輪では見事、リレー3種目に出場したのです。
パリ五輪は、100mバタフライに出場。2大会ぶりに個人種目で代表入りです。力をつけた池江さんは、今年4月のオーストラリアンオープン、50mバタフライで優勝しました。自己ベストに0.22秒に迫る好記録。「やっと、見えなかった昔の自分が見えてきました」と話す池江さんの姿に、また泣いてしまいました。
誰もが悲しみや苦しみ、不安などさまざまな葛藤と共に生きていると思います。苦しみを乗り越え、清々しい姿でスタート台に立つ池江さんを、心から応援しています。
(共同通信/2024年6月3日配信)