池井戸潤さんの小説「俺たちの箱根駅伝」は、正に駅伝が足し算ではないことを教えてくれます。寄せ集めの関東連合チームが、商社を辞めて大学の陸上部を指導することになった甲斐監督のもと、もの凄いチームワークを発揮して快挙を成し遂げるのです。それを伝える日本テレビの現場も、個性溢れるキャラの人たちが絆を深めます。
日本には「タスキをつなぐ」文化が根付いている、と思った折しも、12月7日に愛知駅伝が開催されました。会場となったモリコロパークは愛知万博の会場跡地。美しい木々の紅葉に包まれるなか、愛知県内54の市町村の代表選手が躍動したのです。控え選手も含め約1000人の選手たちは、流鏑馬少年、ドッチボール部や園芸部、乗馬のクラブチームなど色々。
スタート前に「津島市」と書かれたジャージ姿で神野大地さんが挨拶に来てくれました。走るのかと思ったら「故郷のチームの監督なんですよ」と。隣で子どもたちが嬉しそうでした。
レースは序盤、豊川市チームが先行。トヨタ自動車陸上部監督の熊本剛監督のお嬢さん2人が走って大活躍しました。同じ解説者の福士加代子さんは「やっぱりサラブレットは違うね」と大興奮。そして後半は岡崎チームが追い上げました。テグ世界陸上競技選手権のマラソン日本代表だった尾田賢典さんが8区を走り、息子の祥太さんは4区で区間3位の快走。やはり能力は受け継がれています。
この日、南知多町チームの植田准次さん(76歳)は、監督を勇退されました。時には船に乗って町内の篠島に渡り指導することもあったそうです。選手たちからの「ありがとう」のメッセージに、涙ぐんでいた植田さん。私の心も紅葉する一日でした。
(共同通信/2024年12月9日配信)