梅から桜へバトンが渡った3月下旬、「NHKハートフォーラム」がNHK近くの会議室で開かれました。主催するNHK厚生文化事業団では、障害のある方やその家族、支援者から毎年作文を募集しています。そして、このフォーラムで「NHK障害福祉賞」に入選した作品の中から3編を紹介。受賞者もお招きして色々お話しを伺い、リモートで全国に配信しているのです。
この日、私は作品の一部を朗読しながら司会進行を。お隣に、ノンフィクション作家の柳田邦男さんがいらっしゃり、緊張しました。柳田さんは40年前から審査員をされているそう。「素晴らしい作品ばかりです」とおっしゃり、米寿になられたとも。背筋がすっと伸びていて、凛々しい方。健康の秘訣を伺うと「好きなことをしているからでしょうね」と言って微笑みました。なんと、朝3時まで原稿を書いているそうです。そこから7~8時間寝て、歩くことも習慣に。「布団に入ったら、すぐ寝てしまいますよ」と。地図がお好きで、一人旅で北海道や島根、鳥取を車で走る時間が楽しかったそうです。「でも家族に言われ86歳で運転は辞めました」と。
そんな柳田さん、フォーラムでは次男を25歳で亡くした時の悲しみも話してくださいました。優しい眼差しで、受賞者の作品に感想を言ったり、質問をされたり。
「当事者と支援者のあいだ」という作品で佳作を受賞した斎藤彰太さんは、就労支援事業所に勤務し障がいのある人の支援をしていましたが、自分もうつ病になってしまいました。でも「『せっかく病気になったのだからこの経験をいかしたい』という斎藤さんの前向きさがいい」と柳田さん。帰り道、桜の花が神々しくみえました。
(共同通信/2025年3月31日配信)