8月下旬、北海道マラソンの解説の仕事で札幌へ。北海道大学内をジョギングしていたら、立葵の花が背を伸ばして咲く姿に元気をもらいました。
今回は中村匠吾さん(富士通)が出場とあり、楽しみでした。レース2日前にお話しを伺うと「北海道マラソンのゴールは東京五輪と同じ。ゴールして次につながる景色が見えたらいいです」と明るく話してくれました。ここに至るまでの道のりはどんなに長かったことでしょう。
中村さんは、2019年の最初のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)をトップでフィニッシュ。東京五輪の切符を手にしました。しかし五輪が1年延期となり、その間、スピードを磨く練習で怪我をしてしまったのです。本番は62位。落胆する姿に、何と声をかけていいか分かりませんでした。そして今年2月、パリ五輪へ向けて最後の挑戦だった大阪マラソンは、左足首の怪我と寒さで途中棄権。
北海道マラソンのこの日、気温23℃、湿度83%。暑さにめっぽう強い中村さんに適した条件でした。レースは、森井勇磨さん(京都陸協)がスタート直後から一人飛び出し、中間点過ぎまで独走、そこから13人ほどの集団に。そして30㎞の給水から中村さんがペースアップし、先頭集団は6人に絞られました。
残り5㎞地点、中村さんは切れ味抜群のスパート!そこから独走態勢に入ったのです。1発で勝負を決める「勝負師」は健在でした。先頭を走る中村さんの王者の風格に、背中がゾクゾクっとしました。優勝インタビューで「来年の東京世界選手権に向けてがんばりたいです」と話した中村さん。再スタートを切りました。1歳半になる娘の楓花ちゃんの存在も力になることでしょう。
(共同通信/2024年8月26日配信)