さすが芸術の都パリでのオリンピック開会式。絵画の世界から飛び出す演出には度肝を抜かれました。選手団がセーヌ川を船で下り、橋の上での花火や川岸、船上でのパフォーマンスなど全てが美しかったです。「セーヌ川 彩る国旗は 未来へと」なんて俳句を作りながら、朝まで観てしまいました。
びっくりしたのは、レディ・ガガさん(米国)やセリーヌ・デュオンさん(カナダ)が歌ったこと。またクライマックの聖火ランナーに、テニスのラフェエル・ナダルさん(スペイン)、カール・ルイスさん(米国)、ナディア・コマネチさん(元ルーマニア)などが登場。自国の選手・アーティストにこだわらず、広く開かれた大会を掲げたテーマにふさわしい開会式だったと思います。
そんな夢のような時間が終わり、翌日からは厳しい勝負の世界が。100mバタフライに出場した池江璃花子さんが準決勝で敗退。「…頑張ってきた分だけ無駄だったのかって…」と言葉を絞り出す姿に、一緒に泣いてしまいました。勝負の世界は何て過酷なのでしょう。病気を乗り越えて、たゆまぬ努力を続けた池江さんにも容赦なしです。でもきっと、また立ち上がって、池江さんは4年後のロサンゼルスに向かうことでしょう。
兄妹連覇を目指した阿部一二三さんと阿部詩さん。詩さんは2回戦で一瞬のスキをつかれ、一本負けを喫してしまいました。その後の号泣ぶりに、満員のフランスの柔道ファンから「ウタ!ウタ!」と励ましのコールが。そして「妹の分まで!」と思った一二三さんが、見事金メダルを獲得し、連覇を果たしたのです。兄弟の絆の深さに、涙した人も多いでしょう。
筋書きのないスポーツの祭典が、まだまだ続きます。
(共同通信/2024年7月29日配信)