3月10日に開催された名古屋ウィメンズマラソンは女性たちのエネルギーでいっぱい。快晴の中、桜が開花してしまいそうな勢いでした。約2万人のランナー達の先頭には、パリ五輪の残り一枚の切符をかけた選手たち。その目の前に、1月の大阪国際女子マラソンで前田穂南さんが出した2時間18分59秒というハードルが立ちはだかっていました。
レースはペースメーカーが12~13㎞で4人中2人が離脱し、20㎞で日本記録ペースから28秒遅れとなっていました。25㎞過ぎの給水でアフリカ勢の2人がスパートし、安藤友香さんと加世田梨花さんが付き、鈴木亜由子さんが遅れはじめました。5~7mの北西の風が吹く中、日本の3選手は粘りの走りを見せましたが、記録のハードルを超えることは出来ませんでした。でも、優勝した安藤友香さんは7年ぶりに自己ベストを更新。前の晩「殆ど眠れなかった」という鈴木亜由子さん(3位)もゴール直前に思いっ切り転んだものの、自己ベストを更新!選考を通して確実に強化が進んでいると感じます。
そしてレース中に心打たれたのは、10㎞過ぎの給水を取れなかった鈴木亜由子さんを見た加世田さんが、自分で半分ほど飲んだペットボトルの水を渡したこと。「最後の切符」を目指す同志としての美しい友情に、胸が熱くなりました。
パリ五輪まであと5カ月。日本代表の鈴木優花さん、一山麻緒さん、前田穂南さんはそれぞれの個性が光ります。一年延期になった2020東京五輪を、一山さんと前田さんの2人が経験していることは鈴木さんにも良い影響を与えるでしょう。名古屋での給水渡しのような「チームジャパン」の一体感で、8月のパリで力を発揮して欲しいと思います。
(共同通信/2024年3月11日配信)