セーヌ川をおよそ6㎞船に乗ってパレードするパリ五輪開会式。さすがフランスの演出はステキです。競技も馬術がベルサイユ宮殿、エッフェル塔の下ではビーチバレーが。フランス革命象徴の場、コンコルド広場ではブレイキンやBMXなどが行われます。オリンピック期間中、競技が映し出される度に、歴史的建造物を観る人たちは旅を楽しんでいる気持ちになるでしょう。正に、スポーツと芸術の融合です。
そもそも古代オリンピック(紀元前776年~393年)の時から、スポーツと芸術には接点がありました。全能の神ゼウスをはじめ多くの神々を崇めるためのスポーツや芸術の競技祭だった古代オリンピック。全裸で男性たちが競技をし、その姿を絵や彫刻、詩歌に残すなどの芸術祭も同時に行われていました。
ところで、スポーツの芸術性といえば、私は体操の内村航平さんの姿にそれを感じていました。指先、つま先までピンっと伸びた演技は本当に美しかったです。「絵画や音楽のようにひとつの芸術作品を見ているかのように錯覚できる演技が、美しい体操なのではと思う」と話していた内村さんの言葉が印象的です。才能とセンスに加え、あの芸術作品のような技の完成にどれほどの時間を費やしたことでしょう。人の心をとらえる芸術作品にかける時間とセンスに似ているように思えます。
大阪芸術大学で教える学生たちに、パリ五輪で一番観たいのは?と聞いてみました。すると、「開会式!」という声が多かったです。開会式はその国の総合芸術。花の都パリで、100年ぶりに開催されるオリンピック。先ずは、開会式ではどんな演出があるのでしょうか。競技の前に私もそれを楽しみにしています。
(共同通信/2024年7月12日配信)