奈良テレビ制作の番組「オリジン、私の原点、奈良」がスタート。そのナレーションをさせて頂いています。第1回目の放送は、柔道家の野村忠宏さんでした。野村さんの母、八詠子さんと私は仲良しで、八詠子さんからよく地元広陵町で作られた靴下を送って頂いています。そんな親しさから、忠宏さんのことは、弟をみるような気持ちで応援しているのです。
番組で、忠宏さんは祖父が創設した豊徳館野村道場で、3歳から柔道の練習をスタートしたことを知りました。小柄だったため、中学生の頃は女子に負けて涙する日も。でも不屈の精神で鍛錬を続け、天理大学時代にアテネ五輪で金メダルを獲得。その後もロンドン、リオで金メダル。オリンピック三連覇という偉業を成し遂げたのです。
「私の原点は豊徳館です!」と話す忠宏さん。引退後は、若い選手が活動し易い環境を作るためのマネジメント会社を設立しました。「一生柔道家でありたい」と話す瞳が輝いています。今も奈良で暮らす忠宏さんは、豊徳館を訪れる度にパワフルになれるのだと思います。
ナレーションをしながら私は、千葉県いすみ市の実家から大原駅まで8㎞を走った道を思い出しました。4月に母が逝去しましたが、介護期間中は大原駅まで(東京に帰宅するため)走って移動。その道の私の家から町道に出るまでの道は、子どもの頃、夜の練習時に母に足元を懐中電灯で照らして貰ったり、車で伴走して貰ったりした道なのです。
介護期間中に走っている時、母の体調に一喜一憂する日もありましたが、いつも田んぼや里山からの風に「がんばれー」と、背中を押されている感じがしました。誰にでもある大切な原点ですが、私の原点はこの道です。
(共同通信/2024年7月8日配信)