挑戦への第1歩に
日本パラスポーツの父と言われる、医師の中村裕さんが創設した大分国際車いすマラソン。新型コロナウィルスの影響で大会が危ぶまれました。でも「パラスポーツの聖地という誇りがある」という意見などもあり、40回大会を来年に延期し、代替大会として開催してくれたのです。
選手にとっては有り難いです。来年の東京パラリンピックのマラソン日本代表に決まっているのは鈴木朋樹さん(26歳)だけ。他の選手たちは世界ランキングによる出場枠獲得のために、男子は1時間22分23秒、女子は1時間36分26秒を目標にしています。そのチャンスの舞台を与えて頂いたのですから。
前日の記者会見では「腕がもげても最初からガンガン行きますよ」と西田宗城さんが言えば、渡辺勝さんは「スイス合宿の成果をみせます」と。そして「(鬼滅の刃の人気キャラクター)煉獄杏寿郎さんの分まで頑張ります」と笑わせたのは、吉田竜太さん。皆、久しぶりのレースに興奮しているようで明るく、私は積極的に引っ張り合うレベルの高いレースになるだろうと期待していました。
ところが、レースがスタートするや鈴木朋樹さんが先頭に立ち、先ずは西田さん、続いて洞の上さんが対応するも置いていかれ、後は鈴木さんの一人旅。レベルの差を見せつけられました。後続の集団は目標の記録に遠く及ばない記録でレースを進めたのです。5位に入った副島正純さんは「暫くレースがなかったので集団のローテーション(先頭を交替しながら走る)もイメージ通りにいかなかった」と。やはりレース体験が大切なんだと感じました。選手は出場枠を獲得できなかった悔しさはあると思いますが、挑戦への第一歩を踏み出せたと思います。
(共同通信/2020年11月16日配信)
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