天城越えで坂を攻略
新年度が始まり、新たなスタートを切った人も多いと思います。私も4月から朝の連続テレビ小説「ひよっこ」の語りを担当。正にひよっこですが、がんばっています。
先日、その番組の宣伝も兼ねて、NHKの歌番組「うたコン」に出演。五木ひろしさんや石川さゆりさん、平原綾香さん等々、すごい方々とご一緒しました。歌好きの私にはまるで夢のような時間でした。
リハーサルの時に驚いたのは、石川さゆりさんが「天城越え」を歌う時。軽く羽織った着物にシューズ姿のさゆりさんは、足を前後に開いて体の重心を前に後ろに移動させながら、走るように歌われました。そして衣装替えのためにステージから降りると、楽屋まで走る、走る、それが速いのです!色っぽい女の情念を歌い上げるさゆりさんの「天城越え」、骨格を成すのはスポーツの元気さでした。
さゆりさんは番組の中で、大リーグのイチローさんからバッターボックスに入る時に球場に流れるテーマ曲として「天城越え」を使いたいと依頼があった時の話を紹介。イチローさんが「色々なことを乗り越えたい」と熱望したと聞いて、ロック調にアレンジを加えてプレゼントしたそうです。
実は私も選手の頃、レース前になると無性に天城越えが聴きたくなりました。そして60分のカセットテープ全部に天城越えを繰り返し入れて聴いていたのです。「レース中、上り坂になるとさゆりさんの歌声が頭の中に流れて、腕振りも“あまぎ〜ごーえー”のリズムでスムーズに上れました」と話すと、「それは歌い手冥利に尽きるわ」とさゆりさん。スポーツ選手のパフォーマンスの良し悪しは精神的な部分にも関係しています。音楽の力はすごいのです。
(共同通信/2017年4月10日配信)
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