完璧なレースで3連覇
奥の細道で松尾芭蕉が詠んだ句に「あやめ草足に結ばん草鞋の緒」というのがあります。旅の出発に無事を祈る句ですが、句碑が建つのは宮城県多賀城址。そこは12月13日に開催された全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝、松島町から仙台市まで)の第3区です。そのコースを正に一人旅で快走したのは、デンソーの高島由香さん。自らが持つ区間記録を10秒縮める力走でした。
デンソーチームは史上3チーム目の3連覇を成し遂げ、加えて大会記録。私は移動中継車から解説しましたが、完璧と思えるレースに感動しました。1区で光延友希さんがトップと1秒差の2位でタスキをつなぐと、2区の小泉直子さんで先頭にたち、高島さん、4区スーサン・ワイリムさん、5区水口侑子さん、6区橋本奈海さんは一度も先頭を譲らない横綱相撲。先頭を走りながらも一人一人が守りではなく、最後まで攻めの走りをしていたのです。
チームの強さはレギュラー争いの厳しさだと感じます。普段は仲の良い選手達ですが、練習となると自らを追い込み苦しさに泣かない人はいません。メンバーを勝ち取るための戦いは厳しく、今回も6人のメンバーに入れなかった7人目の選手の自己ベストが15分46秒。チームによっては準エース級のタイムです。
レース後、若松誠監督に2連覇の時と今回の勝利の違いを伺うと、「個々が力を付けた。北京世界陸上に高島が出場し、リオ五輪の参加標準記録を光延が切った。個人でも世界と戦える選手が出てきました」と嬉しそうに話ました。駅伝が最終ゴールではなく、駅伝を上手に利用してチームの和を育みながら、個人の力が伸びていく。五輪代表選手が出る日も近そうです。
(共同通信/2015年12月14日配信)
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