
山根美岬は、タータンのトラックさえ走ったことがない、田舎の中学二年生。
しかし、自然に鍛えられた天性のバネを密かに見込んだ男がいた。
はたして美岬は、世界と互角にたたかっていける逸材なのか!?
才能豊かな仲間たちとの出会い。初めて芽生えたライバル心。そしてほのかな初恋。
いつかきっと追いつきたい! 追い抜きたい!!
アスリートとしての自覚と、勝利への執着心を得るまでを描く「助走」編。

体操着でおかっぱ髪の少女が、五輪のマラソン代表になる。マラソンは2時間20分くらいで終わるけど、そのために積み重ねられた時間は10年以上にもなるのです。
スポーツはきれい事だけでは済まない、というのが私の持論です。世界の舞台で活躍する人も始めから人格者だったわけではありません。私自身、選手の頃、同じ屋根の下で暮らすライバルが気になって気になって、彼女のお茶碗にごはんをギューギュー詰めに盛って、太らせようとしたこともありました。あーこんな自分が嫌だ、醜いと思いながらも、感情を抑えることが出来ませんでした。
でも、失敗し、挫折をする中で自分に足りないものを見つけ、ライバルへの気持ちも変わっていったのです。
来年は北京五輪。2時間20分ほどの闘いに挑む日本代表選手に、主人公・美岬を重ね合わせてみてもらえれば嬉しいです。そして「僕も」「私も」と、五輪を目指す少年・少女が出てきてくれることを願っています。
増田明美