逃げ切った千葉県チーム
信夫山が赤く色づき、阿武隈川には白鳥が12羽飛来していました。11月10日に福島市で開催された東日本女子駅伝、今年は鬼ごっこのような興奮に包まれました。というのも大会前から、東京チームでアンカーを務める新谷仁美さん(ドーハ世界陸上1万m日本代表)が「2分差ならひっくり返せる」と公言していたからです。優勝候補の千葉や群馬はそれまでに少なくとも2分以上の差を作っておきたいと緊張感が走りました。千葉は「アンカーが加世田だから1分半の貯金があれば大丈夫だ」と滝田チーム監督が言えば、横で「いいえ、3分欲しいです」と加世田梨花さん(名城大学)。彼女は成田高校の私の後輩なので、「なにアホなこと言ってんの!」とはっぱをかけました。
そしてレースは、特に中学生や高校生が必死に鬼から逃げるように走ったのです。前半は宮城県がトップ。33歳の釜石慶太監督が指導する仙台育英高校の選手の活躍が目立ちました。
いよいよアンカー。トップの千葉から2分45秒差の7位でタスキを受けた新谷さんは、どんどん抜いて2位まで上がりました。加世田さんは鬼に捕まるまいと逃げます。いつもはしないサングラスをかけたのも、必死の形相を見られたくないから?身長148cmで小さな猪のように走る加世田さん、追う新谷さん(165cm)はヒョウのよう。観る方も興奮しました。そして千葉チームは逃げきって優勝。加世田さんのホッとした顔が可愛いかったです。新谷さんは何と、10kmを30分52秒で走る凄さ。昨年自らマークした区間記録をまた更新しました。鬼、新谷さんから皆必死に逃げながら、自分を強化出来たのではないでしょうか。新谷力は凄い!と感動しました。
(共同通信/2019年11月11日配信)
|