日本のスポーツ科学
ドーハ世界陸上50km競歩の夜、海沿いの競技会場へ向かう道には日本のススキのような草が潮風に揺れていました。また日本とは違う声の虫の音も聞こえて、つかの間の秋を感じたのです。
でも1kmの道を25往復するコースは蒸し暑く、少し歩いただけで汗が噴出。コース脇には、日本陸上競技連盟科学委員会の皆さんが待機していました。委員長の杉田正明さんに気温と湿度を聞くと「今、31℃、湿度は80%です。昨夜の女子マラソンより気温は低いですが湿度は高いですね」と。だからレースはゆっくり進むと思っていました。
ところが、スタートしてすぐに鈴木雄介さんが飛び出し一人旅に。第2集団に野田明宏さん、遅れて勝木隼人さん。一緒にスタートした女子の渕瀬真寿美さんも女子の中ほどでレースを展開。日の丸を持って、行ったり来たりしながら皆を応援しました。途中で鈴木さんのご両親にもお会いでき、お母さんの恵子さんは「雄介、飛び出していますけど自分のペースだから大丈夫」と笑顔。隣でお父さんの裕文さんも穏やかな表情で頷いていました。
感動したのは、給水所。世界各国の暑さ対策の知恵の集結の場でした。日本は機材もスタッフも群を抜いていたのです。競歩コーチの今村文男さんを中心に4人の選手に対応。コース脇に置かれたクーラーボックスは大小合わせて14個。選手は帽子と首に巻かれたタオルを通る度にスタッフに渡し、別のスタッフから新しい帽子とタオル、飲み物や氷をもらっていました。「帽子とタオルを冷やしておいて、1周(2km)毎に交換します」と杉田さん。細やかさに感動。そして鈴木さんは見事、金メダルを獲得!日本のサポートスタッフにも金メダルです。
(共同通信/2019年9月30日配信)
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