小出さん最後の弟子
北の大地を流れる石狩川のように、およそ2万人のランナー達が札幌の目抜き通りを進んでいきました。8月25日に開催された北海道マラソン、女子トップでゴールしたのは和久夢来さん(ユニバーサルエンターテインメント)です。4月に逝去された小出義雄さんが最後にマラソンに送り出した選手。初マラソンの名古屋ウィメンズを2時間33分台で走った和久さんに、「35分かかると思ってたよ。やっぱり和久ちゃんは強えなぁ」と小出さんは誉めてくれたそう。その翌月に天国に旅立ったのです。レース前の取材中、和久さんは「今も監督が夢によく出てきてくれます。のんきな顔をしています」と涙ぐんでしまう場面もありました。
この日、レースは5kmを18分半とスローペースで進み、先頭集団は7人がけん制し合う状態。和久さんは集団の後方で力を温存しました。30km過ぎから徐々にペースが上がると、少しずつ集団は小さくなったのです。そして35kmから和久さんがキュとスピードを切り替え、40kmまでの5kmを17分15秒で。誰も付けませんでした。
トップでゴールした後、「今日は勝つことだけを考えていました」と和久さん。ただ遅いペースに慣れるとスピードの切り替えは出来にくいものです。でも見事に切り替えてのスパートでした。二回目のマラソンで勝負強さを見せた和久さん、小出さんに捧げる走りにみえました。
そして、「次は冬のマラソンです!」と瞳を輝かせたのです。深山文夫コーチの話しによると、「次に和久は、スピードでマラソン代表を狙っていますよ」と。まだ2020年東京五輪を諦めていないのです。北海道で勝利した後は、「記録」にチャレンジ。さすが小出さんの秘蔵っ子です。
(共同通信/2019年8月26日配信)
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