増田明美のホームページ ビデオメッセージへ各種お問い合わせへトップページへ

TOP > おしゃべり散歩道 > 2018年目次 > エッセイ第51回
プロフィール
おしゃべり散歩道
イベント情報
出演予定
執筆活動
リンク集

おしゃべり散歩道2018

陸上長距離でも問題露呈

 戌年はワン、ワン!と次々にスポーツ界の古い体質、悪しき習慣などが露呈しました。レスリングのパワハラ、アメフトの悪質タックル、ボクシングに体操と、連日ニュースやワイドショーで取り上げられました。平成の30年間で社会が大きく変化する中、スポーツ界が時代について行けなかったことが一気に噴出したのでしょう。そして今年の締めは鉄剤注射問題と実業団移籍制限問題。陸上長距離界も例外ではありませんでした。
 貧血を食事で改善せずに鉄剤注射を打つと、痩せた体で貧血症状が治り、パフォーマンスが高まります。しかし、骨や筋肉が成長せずに選手生命は短くなり、それだけでなく過剰な鉄は内臓に蓄積し、健康被害まで引き起こすのです。ジュニアの長距離女子選手を中心に行われ、実業団チームの監督からは「鉄剤注射を打ってきた選手は体が弱く、マラソンまで到達する選手が少ない」と嘆きの声が。学校の部活動中心のため、中学、高校、大学と3〜4年毎に指導者が変わります。しかも、駅伝での注目が高いため、選手の長い競技人生よりもチームの勝利が優先されがちなのです。ここに近年の女子マラソン低迷のひとつの要因があるのかもしれません。
 そして移籍問題は、選手が他の実業団チーム移籍したくても、前のチームの承諾がなければ永遠に次のチームには入れないというもの。「転職を認めない」という仕組みなのです。終身雇用を強いるような前時代的な仕組みがまだ残っています。ただ、ラグビー、バドミントンなど実業団スポーツで次々と移籍制限を撤廃、緩和する動きが出てきました。来年は亥年。選手が競技の道を真っ直ぐに進めるよう、環境を整えたいものです。

(共同通信/2018年12月21日配信)

次のエッセイを読む 【2018年の総合目次へ】 前のエッセイを読む


Copyright (C)2001-2021 Kiwaki-Office. All Rights Reserved.
サイト内の画像・文章等の転載・二次利用を禁じます。